非日常の空間をピクニック気分でお散歩写真。
六甲山の自然の中に現れた現代アートの作品を楽しもう!
制作の背景にあるストーリー、素材や製法、景色との調和などにも着目。芸術家になった気分で作品をめぐってみましょう。ピックアップした作品をご紹介します。
アート・メディエーター
はが みちこ twitter
アート・メディエーター。関西を中心に、アート等にまつわる各種執筆、展覧会やイベントの企画、コーディネーション、コンサルティング、授業、その他もろもろをおこないます。六甲ミーツ・アートは学生時代から毎年の秋の楽しみ。
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急行バスで一気に麓まで到着した後は、ケーブルカーとバスを乗り継いで山上の会場へ。
最初のスポットは、コンサートや美しい中庭が魅力の六甲オルゴールミュージアム。
新神戸駅では、前田耕平の《イトム》がお出迎え。なぞめいた大きな土の塊の彫刻は、シルエットからすると、もしや大仏?(タイトルの文字列に目を凝らしてみて)傍らにあるのは、仏型シルエットを担いで神戸の市街地を歩く作家のパフォーマンス映像。数珠つなぎに繋がる神戸の街の映像に、不思議と引き込まれてしまう。土の彫刻は、前田の手によって、会期中に新神戸駅から六甲山へと少しずつ移動させられる予定。山上で、姿を変えた《イトム》に出会えるかも。
撮影:高嶋清俊
新神戸駅からは、市営の急行バスで六甲ケーブル下駅に直行できる。市街地からわずか30分で、緑あふれる六甲山の麓まで楽々と到着。(急行バス時刻表はこちら)
木々の根元で休むのは、愛らしい鳥の木彫作品かな?と、微笑ましく眺めていたら、実はこれはインタラクティブなメディア・アート。有機的なフォルムをした鳥の身体をそっと撫でてみると、電子音の優しい音楽が奏でられる。この音楽は、自然の環境音や、ミュージアム所蔵のアンティーク・オルゴールの音をデジタル変換したもの。オルゴール・ミュージアム中庭の自然環境と一緒に奏でるハーモニーが美しい。
アーティストの谷澤と小説家の藤野のコラボレーションは、オブジェとテキストを交差させることで、通常ではとらえがたいようなモノの存在を、両者のあいだの領域に出現させる。今回は、この植物園でもひときわ存在感を放ってきた松と榎の木霊が顔を出し、道ゆく人に語りかける。二つの大木からの研ぎ澄まされた呼びかけは、あなたにはどんな風に届く?
長靴やカゴ、植物など、さまざまな物が乗せられたテーブルが並ぶ。これは、宮木が会期中の日曜日に六甲山でパフォーマンスをし、そこで使うものや収集したもの。パフォーマンスといっても、この重たいテーブルを自力で支えて歩き回り、会場内の気に入った場所で「ピクニック」するささやかなもの。自分の身体に負荷をかけ、世界との関わりにテンションが生じる様子の一端を見せている。日曜日は「ピクニック」中の作家を探してみたい。
「白い山」、それはかつて木材が乱伐され花崗岩が剥き出しとなった、六甲山の姿を見た植物学者の言葉から着想を得た。付近の石切場跡から集められた御影石の上には、六甲山の植物をモチーフにした数々の切り絵が白い山を形づくる。ゆらゆらと揺れる植物は、当時は岩山だった六甲山の未来の姿の蜃気楼のよう。自然環境の大きく変化してきた土地の歴史を、静かに教えてくれる。
古布を用いたパッチワークで、自身の心象を伸びやかに抽象化してみせる瑞々しい作家。六甲山にまつわるモチーフをポップに散りばめた作品には、山の開拓にも関係した居留外国人らしきお顔も。《わたしが縫う景色》というタイトル通り、この作品のレプリカ・フラッグを手に記念撮影をすることができる(今年のメイン・ビジュアルのイメージ)。旗を掲げて、神戸市街を眼下に眺めたなら「六甲ミーツ・アートに来た〜(今年も!)」と実感できるはず。
撮影:高嶋清俊
むかし懐かしい動物型遊具・メロディペットの魅力に魅せられ、全国の遊園地を訪ね歩く竹内。今回は彼女が蒐集したメロディペットを用いて、哀愁あふれる世界をインスタレーションに。使われていない会場のゴンドラと化学変化を引き起こし、忘れ去られようとしている存在達が白昼夢のように息を吹き返す。作家滞在時にはメロディペットに乗ることができるので、ぜひもう一度体験してみて。
撮影:高嶋清俊
サテライト会場の有馬温泉エリアに向かうには、ここからロープウェーに乗ろう。温泉めぐりも組み合わせた、ゆったりアート旅も魅力的。
☆有馬温泉エリアのマップはこちら
安藤忠雄の静謐なコンクリートの教会に展開されるのは、ひときわミニマル、そして饒舌なインスタレーション。自然の移ろいをうつす映像からなる立体は、池であり、また窓であり。自然の一部を内に引き入れる手法が、日本建築の感性を思わせる。舞台作品など、場を演出する作品を多く手がける山城ならではといえるアプローチ。
六甲山の雄大な自然は、しばしばアーティスト達を挑戦に向かわせる。廃木材を組み合わせ、ロープで繋いだ大掛かりな構造体を、作家は巣と呼ぶ。山中に暮らす仙人のように、会期中に中村はこの《風狂ハウ巣》に棲みついて、自然の音を集めたり、また自ら演奏したり、日々、自然と対話をして生活する。生存と表現が密接に繋がる自身の芸術観を「風狂」という言葉に込め、自らを風狂師として体現しようとする若い実践。
10年あまり遊休化していたホテルを「イカす(活かす)」ための活用プロジェクト。手がけたのは、神戸市立海外移住と文化の交流センターで長らく活動を続けてきたC.A.P.のアーティスト達。客室の一室一室に、廊下や階段に、30名あまりのアーティストの表現がみっちり展開され、ここだけでも見応えたっぷり。六甲ケーブル山上駅に展示される、C.A.Pがかねてから交流を続けているドイツ・ブレーメンのアーティスト達の作品もあわせて鑑賞して、神戸を中心とした表現者達のネットワークの密度を体感してほしい。