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2021年09月28日 |アーティスト

《アーティストインタビュー》パルナソスの池(淺井裕介・高山夏希・松井えり菜・村山悟郎)

六甲山の隣・摩耶山中にたたずむ旧摩耶観光ホテルで滞在制作を行ったパルナソスの池(淺井裕介・高山夏希・松井えり菜・村山悟郎)。この夏に登録有形文化財にも指定された「廃墟の女王」での制作について、一般公開されていないホテルの内部の様子と併せてご紹介します。

☆本アートプロジェクトは特別な許可を得て実施しています。また、当記事の写真は作品制作・取材のために特別に撮影したものです。

パルナソスの池(左から村山悟郎、松井えり菜、淺井裕介、高山夏希)撮影:遠藤文香

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「パルナソスの池」の活動
4人の画家によるアーティストコレクティヴ。
1900〜40年代にかけて「池袋モンパルナス」と呼ばれる芸術家たちのコミュニティがあった地域周辺に”たまたま住んでいた”4人が集まり、2020年結成。コロナ禍で制限の多い中で見つけた新しい動きとして、池袋の文化的な土壌を発展させるために活動している。
今回が初の”遠征”。

旧摩耶観光ホテル(取材時スタッフ撮影)

【摩耶観光ホテル】
1930年に開業し、1990年代に閉鎖されて以降廃墟となったが、その優美なたたずまいから「廃墟の女王」と称される。2021年8月に廃墟としては初めて登録有形文化財に指定。

《今回はなぜ”マヤカン”で?》
松井さん:導かれるように(決まりました)。
村山さん:初めに、<山>というのは、どんな想像力を宿した場なんだろうという問いがありました。というのも我々の(コレクティヴ名にもある)パルナソス山はギリシャ神話のモチーフのひとつであり、そこには芸術の神様アポロンがいます。これをもとにフランスのモンパルナスという芸術家たちが居を構える街ができ、そこにあこがれて池袋モンパルナスというものが出来ました。
そういうわけで僕らはパルナソス山に親しみがあり、<山>という地形や、そこで生まれるイマジネーションに関心があったんです。山には、地形的に人間には手をつけられなくなった廃虚があって、近代的な開発を経てきた六甲山にとっては非常に批評的なモチーフになりうると考えました。文化的にも歴史的にも、その象徴的な場所が摩耶観光ホテルだったというわけです。

《初見はどのような印象でしたか。》
松井さん:廃墟は元々好きだったので、まさかここで制作ができるとは、という感じ。光栄です。
建物が森と一体化しているようで、まるでそこで制作している自分たちも森の生き物に
なっていくようです。森に住まわせてもらっているのは私達ではないか、と。
浅井さん:初夏に下見に来た時、雨漏りがしていました。
屋内だけどちょっと屋外みたいで、「自然の中」という感じがします。
ここに人を連れてくることはできないけど、ここで作ったものを見せられたらと思います。

村山さん:左右対称・丸い窓など、洋館風の建物に当時のモダニズム建築の様式が表れていて、
90年以上この地に立っているということを確かに感じます。

松井さん:山と海のある神戸らしい建物ですね。

高山さん:マヤカンに初めて足を踏み入れたのは6月14日でした。
初見の印象は、怖くないという印象でした。私がネット上の情報から見ていたイメージとは違っていました。電気が一切なく、自然光から目に入ってくる情報量の多さには歴史の堆積を感じました。外部の光で露になるマヤカンの内部や肌理を見て、昔の人が教会にいた時はこんな感覚だったのかなと、崇高なものへの眼差しを追想しました。実際にマヤカンにはチャペルの部屋があって、その場所が個人的には1番気に入っています。

《滞在制作中のエピソード》
高山さん:
日没のマヤカンを写真に収めようと、夕方の最終ロープウェイを見送った日があるんです。夜のマヤカンで撮影をしているとき、懐中電灯の光で私たちの影が大きくホールの内部に映し出されることに気づきました。皆が同時にマヤカンと波長を合わせられた瞬間だったように感じました。暗闇のマヤカンと、写真家の遠藤文香さん含めて5人とが、一緒に遊んでいるような感覚でした。遊びと言っても本気で全力のセッション。マヤカンと私たちが溶け合い、浮遊しているような不思議な感覚で、特別な経験でした。

摩耶観光ホテル内部(取材時スタッフ撮影)

《この地だからこそできる作品とは。》
村山さん:この場所の面白いところをみんなで探して、アイディアを練りました。
ここで生まれるものを大事にしたいという気持ちがあったので、
印象を持ち帰って制作するのではなく、環境と対話する方法をとりました。雨漏りを受け止めてその水で絵を描いたり、現場で生まれる作品です。
また、全館回って写真を撮り、その写真をベースにしたドローイングもしました。
実際の展示では、ホテルで90年間眠っていた遺物―落下したシャンデリアや壊れたイスなど―を
許可を得て借りてきて、現場でつくった作品と残されていた遺物を同じ空間に展開します。
(展示会場:「旧パルナッソスの休憩小屋」

登録有形文化財にもなり、より保存を大切にしていく場所なので、この場のエキスみたいなものを
固めて作ったものを会場に持ってくるイメージです。

撮影:遠藤文香

《ホテルと展示会場では作品の見え方が違うと思いますが、どのように展示を作りますか。》
村山さん:最大の作戦は、ホテルの中で90年の時が刻まれた遺物を直接持っていくことですが、その見せ方にも工夫を考えています。廃虚は長らく人の手が入っていないため、垂れ下がったり、床に伏せたりと、重力や水の流れに従って、その佇まいを変えていっているんです。そのような姿がヒントになっています。
写真へのドローイングと、写真家の遠藤文香さんによる制作風景・マヤカンの風景写真も併せて複合的に展示します。
それと、展示会場になった六甲山の旧カンツリーグリルも1937年に竣工された築80年を超える建物で、こちらの空間との融合も見どころになると思います。

ホテルで眠り続ける遺物たち(取材時スタッフ撮影)

松井さん:展示する写真の中にある遺物も持っていくので、探しっこみたいな楽しみ方もできると思います。

村山さん:ホテルの裏手のバルコニーでご婦人がポーズをとっている白黒写真が残っていて、
同じポーズで写真を撮ったりもしました。
廃墟ってなるとどうしても汚い・暗い・おばけが出るという負のイメージがあると思いますが、
そういう面白い要素も取り入れて、新しい捉え方をできるのではないかというのが僕らの狙いです。


ホテルが現役だった頃の写真(左)と同じ場所でポーズを取る松井えり菜氏(右)(アーティスト提供)

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実際の作品は六甲山・旧カンツリーグリル=「旧パルナッソスの休憩小屋」会場全体に展開。
廃墟の退廃的な魅力だけでなく、滞在制作の約20日間の間にアーティストとホテルの間で交わされた対話の様子がひしひしと伝わってくる空間となっています。
ぜひ会場でお確かめください!


パルナソスの池《山々を泳ぐ方舟》旧パルナッソスの休憩小屋

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